2009年7月号
秋原正俊監督&温水洋一さんインタビュー
『斜陽』
“斜陽族”という言葉が生まれ、発刊から半世紀を経た現在でも根強い人気を誇る太宰治の「斜陽」を映画化。ある一家がたどる運命を軸に、突然の苦境に立たされたヒロインの姿を、生きることの悲哀をにじませながら描く。全編デジタル撮影の映像が美しくも哀しい原作世界を表現している。監督は『富嶽百景 遥かなる場所』で太宰文学を映像化している秋原正俊。伯父の援助が途絶え、親類の別荘に身を寄せるヒロインを佐藤江梨子。その想い人・上原を温水洋一が好演している。
作品のあらすじ:
伯父の援助が突然途絶えて、親類の別荘へ引っ越すことになったかず子と母だったが、慣れ親しんだ旧家への思いから母は病に倒れてしまう。そんな中、かず子の弟・直治が家に戻ってくるが、かず子、母、直治の生活は、思いもしなかった方向へと滑り出してしまい……。
配信:カエルカフェ
監督:秋原正俊
出演:佐藤江梨子/温水洋一/伊藤陽佑 ほか
○秋原正俊監督&温水洋一さんインタビュー○

ー監督は今回で太宰作品2回目ということですが、「斜陽」はいつ頃に読まれたんですか?
秋原:昔に読んだことはあったんですが、ほとんど斜め読みだったんです。僕らの世代は特に太宰作品について、温度の低かった世代だったんです。僕らの上の世代には「斜陽族」がいて、僕らのしたの世代には太宰ファンも多くて。たぶん一番、何かしらの絡みが無いと読まない世代だったんです。僕も多分に漏れずそのタイプでして。2005年から文学作品を撮り始めるにあたって、客観的に太宰をやってみようと思って読み始めました。そこで、太宰と正面から向き合ったのが、前作の「富嶽百景」だったんです。
ー昔読んだときと、今読んだときの違いはありましたか?
秋原:基本的に太宰治の作品として読むのか、ただの小説として読むのかの違いだと思うんです。当然映画化するとなると、小説として読むので内容をきっちり読んでいくと大変深い。50年近く前に、こういう文章や話を書いている・・・まさに現代を予見しているような話ですよね。「シングルマザー」なんて当時あまりいなかったでしょうから。そこに同時代性を感じました。普通だったら「太宰作品だったら内容は女々しいんじゃないのか」とか思うじゃないですか。でも今回はそのイメージから離れて、客観的に素晴らしい作品だなと思いましたね。
ー作品は時代設定が曖昧な印象だったのですが、脚本設定をされるにあたって、時代設定はどのように決めていったのですか?
秋原:露骨に今の時代に設定しようとは思ってなかったんです。ただ、あまり時代設定を明確化したくなくて、現代にある昔のような、古きよき街を出していこうと思ったんです。でもそれでは入りづらいということもあるので、現代であることをアピールするために携帯電話を取り入れたんです。もうひとつの理由は、見る人への配慮と言うか・・・。映画を見に来ていきなり「疎開」っていう単語を出されても、「これは時代劇なんだな」と思ってしまう若い子たちも多いと思ったんです。そういう人にも入りやすいようにと設定しましたね。
ーキャスティングがユニークだなと思ったのですが、どのように決めていかれたんですか?
秋原:まずは上原役から決めていったんです。そこで最初に考えたのが、太宰だったらどのようにキャスティングするかってこと。恐らく、原作を読まれている皆さんは太宰と上原を重ねて見るじゃないですか。でも、彼だったらあえてそこ(キャスティング)は崩すと思ったんです。なので、上原という役は脚本段階からきちんと考えていたし、まず最初に頭に浮かんだのが温水さんだったんです。なので温水さんには「ストレートな二枚目」である上原を演じて欲しいとお願いしました。

ー一緒にお仕事されたのは「伊藤の話」から今回で3作目だそうですが、温水さんの監督に対する印象は?
温水:最初にお会いしたのはTBSの1階のロビーの喫茶室だと思うんですが・・・。(笑)「あ〜せっかちな人だな」という印象でしたね。たまたま20分程前に僕が先についていて、コーヒー飲みながら別の本を読んでゆっくりしてたら、すぐにいらっしゃって。結局マネージャーの方が最後に来たなんてことがあったんですよ(笑)。まぁ、限られた時間内で撮らないといけなかったりするんで・・・、とても早いですね(笑)。年も変わらないので、撮影中もディスカッションしながら楽しく、精力的に撮っているというイメージですね。
ー役を作る上では、ふたりで話し合いながら決めたのですか? それとも監督のほうでがっちりイメージが決まっていたのでしょうか?
秋原:基本的に台本を役者さんにお渡しした時点で、各自が作り上げてこられます。そこに対して、ああだこうだと口出しはしないですね。他の役者さんとの組み合わせで、すれ違ってたりぶつかったりしないようには考えますけれど、基本は役作りはお任せしてます。簡単なイメージは伝えますけどね。
温水:現場に入れば監督と俳優なので、演出どおりにやりますね。僕もこういう文学作品にはあまり出演したことがないですし。どっちかと言うとコメディ作品の方が多いので、こういうシリアスな話は、初めてだったので、また、どんな映像になるんだろうと想像がつかなかったです。
ー上原とご自身で共通する点はありますか?
温水:お酒は好きですが、あんなふうにデカダンな気取った感じはないかな。若かりし頃はありましたけど(笑)。なので、共通点を探して役を作るというよりも、原作を読んだときの、僕なりの上原イメージで演じました。有名な作品ですし、原作ファンには「え、温水さんがやるの?」と思われていることに動揺しているところは少しありましたが、僕が演じる「上原」で良いのではと思って。

ー撮影期間はどれくらいの期間をかけたんですか?
秋原:実際は11月の初旬から中旬までのだいたい1カ月くらいですね。でも冒頭の桜のシーンは、試写の2週間前くらいまでギリギリ待って撮影しました。フィルム映画だったらできないんですが、デジタルだったので。僕の作品では季節感をまたぐことがあまりなく、ひとつの季節だけを重点的に撮ることが多いんですが、今回はあえてそれに挑戦しました。季節が表す形容詞的なシーンを今回多く取り入れていきましたね。それで深みを出せないかなと思ったんです。
ーロケ地で松山に来られたそうですが、どのシーンを撮られたんですか?
秋原:作品の最後の方に出てくる、女の子が二人で演奏しているシーンを奥道後で撮影しました。丸一日かけて撮影したのかな。その日は朝から雨がぱらついていてね。撮り終わった瞬間ザーーーーっと降り出して(笑)。でも、夢の中に出てくる意味深なシーンだったので、逆に晴れ晴れとしてなくて良かったです(笑)。(監督)
ー最後に主人公・和子から上原に宛てて書かれた手紙の内容ですが、男性としてどのように思いますか?
温水:ん〜(苦笑)。僕だったら・・・ああいう一途な思いは受け止めるかもしれないですが、ギリギリですよね。もしかしたら引いてしまうかもしれない。ちょっと怖いところがありますね(笑)。でも、世間からずれてしまっている女性をちょっと俗世に引っ張ってみたい気はします。

ありがとうございました!
「斜陽」は6月13日(土)よりシネマサンシャイン重信にて公開されます。
温水さんの「二枚目ぶり」と作中に出てくる松山・奥道後の風景に注目しつつ、お二人が紡ぐ「斜陽ワールド」に浸ってみてはいかがでしょうか?
6月12日に南海放送にてインタビュー



